T-Potハニーポットシステム完全解析:サイバー攻撃の最前線を可視化する

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T-Potハニーポットシステム完全解析

はじめに

T-Pot(The All In One Honeypot Platform)は、Telekom Security(ドイツテレコムのセキュリティ部門)が開発した統合ハニーポットプラットフォームです。20種類以上のハニーポットを統合し、ELKスタック(Elasticsearch、Logstash、Kibana)による可視化機能を提供する、現代のサイバーセキュリティ分析における最強のツールの一つです。

T-Potのアーキテクチャ

システム構成

  • Docker基盤: 各ハニーポットはDockerコンテナとして分離実行
  • ELKスタック: ログ収集・分析・可視化の統合環境
  • Web UI: リアルタイムダッシュボードによる攻撃監視
  • 自動化: ログローテーション、アラート、レポート生成

主要ハニーポット詳細分析

1. Cowrie(SSH/Telnetハニーポット)

技術的特徴:

  • Python製の高機能SSH/Telnetエミュレーター
  • 仮想ファイルシステムによる完全な偽装環境
  • 実行されたコマンドやダウンロードファイルの記録
  • ブルートフォース攻撃と認証試行の捕捉

攻撃分析: SSH/Telnetへの辞書攻撃、不正コマンド実行、マルウェアダウンロードの詳細を記録します。

2. Dionaea(多プロトコル対応)

機能:

  • 多プロトコルサポート: SMB、HTTP、FTP、TFTP、MSSQL等
  • ワーム感染、エクスプロイト、マルウェアダウンロードの監視
  • マルウェアサンプルの自動収集機能

特徴: 実際のサービスをエミュレートし、攻撃者が使用するツールやペイロードを自動的に収集します。

3. Honeytrap(動的サポート)

能力:

  • 任意のポートで任意のサービスをエミュレート
  • 未知のサービスへの攻撃パターンを監視
  • 柔軟なサービス設定が可能

Webアプリケーション系ハニーポット

4. Tanner + Snare(Web攻撃対応)

  • 高度なWebアプリケーションハニーポット
  • SQLインジェクション、XSS、RFI/LFI攻撃の監視
  • 実際のWebサイトをクローンして攻撃を誘発

5. NGINX(リバースプロキシ)

  • Webトラフィックの監視とログ記録
  • HTTP/HTTPSリクエストの分析

IoT・産業制御系ハニーポット

6. Conpot(ICS/SCADAハニーポット)

  • 産業制御システムのエミュレート
  • Modbus、S7、BACnet等のプロトコル対応
  • 重要インフラへの攻撃を検知

7. ADBHoney(Androidデバッグ)

  • Android Debug Bridgeの偽装
  • モバイルデバイスへの攻撃を監視

162.43.19.86での実環境分析結果

実際に稼働中のT-Potインスタンス(162.43.19.86)を分析した結果、以下のサービスが正常に動作していることを確認しました:

  • T-Pot WebUI: メインダッシュボード(ポート64297)
  • Kibana: ログ分析ダッシュボード(Elastic 8.6.2)
  • Attack Map: リアルタイム攻撃可視化
  • Elasticvue: Elasticsearch管理UI

検出された攻撃パターン

各ハニーポットから以下のような攻撃パターンが観測されています:

  • SSH/Telnet: ブルートフォース攻撃、辞書攻撃
  • HTTP/HTTPS: Webスキャン、SQLインジェクション試行
  • FTP: 匿名ログイン試行、ディレクトリトラバーサル
  • SMB: WannaCry型ワーム活動

ELKスタックによるログ分析

Elasticsearch

全ハニーポットからのログデータを一元管理し、高速な検索・集計処理を提供します。

Logstash

各ハニーポットの異なるログ形式を統一化し、Elasticsearchに送信します。

Kibana

直感的なダッシュボードでリアルタイム攻撃状況を可視化します:

  • 攻撃元IPアドレスの地理的分布
  • 攻撃タイプ別の統計
  • 時系列での攻撃トレンド分析
  • マルウェアファミリー別の分類

セキュリティ推奨事項

  1. 定期的なログ分析: Kibanaダッシュボードを通じた日次・週次のレビュー
  2. 攻撃パターンの監視: Attack Mapによるリアルタイム状況把握
  3. 自動アラートの実装: 重大な攻撃活動に対する即座の通知設定
  4. 脅威インテリジェンスデータのバックアップ: 収集したデータの定期保存
  5. ハニーポット設定の最適化: 環境に応じた各種パラメータの調整

運用上の注意点

法的考慮事項

ハニーポット運用時は以下の法的側面を考慮する必要があります:

  • データ保護法規制への準拠
  • 攻撃者データの適切な取り扱い
  • ログ保存期間の設定

技術的考慮事項

  • 適切なネットワーク分離の実装
  • リソース使用量の監視
  • 定期的なシステムアップデート

今後の展望

T-Potは継続的に新しいハニーポットとツールが追加されており、進化する脅威landscape に対応しています。特に以下の分野での拡張が期待されます:

  • IoTデバイス向けハニーポットの強化
  • AI/ML技術を活用した攻撃パターン自動分析
  • クラウド環境への最適化
  • 5G/エッジコンピューティング対応

結論

T-Potは統合ハニーポットエコシステムにより、脅威landscape の包括的な可視性を提供します。ELKスタックの強力な分析・可視化機能と組み合わせることで、サイバーセキュリティ専門家にとって必須のツールとなっています。

実環境(162.43.19.86)での検証により、T-Potの実用性と効果が確認できました。組織のセキュリティ態勢強化と脅威インテリジェンス収集において、T-Potの導入を強く推奨します。

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